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上肢(腕)の障害

上肢(腕)とその構造

上肢というのは、人の腕と手のことをいうものとされています。肩から手の指先までの間の部分ですね。

このような広い意味での上肢について、「労災補償障害認定必携」では、肩~手首までの「(狭い意味での)上肢」(=腕)と手首から指先までの「手指」に分けて説明しているので、本項ではそのような分類に従って、「上肢(腕)」についてご説明します。

上肢(腕)の部分の骨は、下図のようになっています。   肩関節から肘関節までの間に上腕骨が伸びており、肘関節から手関節(手首)までの前腕の部分には、手の親指側に橈骨、小指側に尺骨、という2本の骨が、並行的に並んでいます。

(上腕~前腕の骨図)

外傷と後遺障害

交通事故により、上記のような上肢(腕)が、切断、骨折等々の外傷を負うことがあります。

特に多いのは、バイク、自転車、歩行者等が自動車に衝突され転倒した場合等に、地面に手をついて橈骨の手首側の部分を折ってしまう「橈骨遠位端骨折」でしょう。
肩から落ちた場合に上腕骨の肩側を骨折する「上腕骨近位端骨折」も、転倒により生じる代表的な骨折とされています。

このような上肢の外傷により、症状固定後も傷害が残ってしまう場合がありますが、労災保険及び自賠責保険では、このような障害について「欠損障害」、「機能障害」、「変形障害」という分類をしています(なお、以下の説明では、便宜上、自賠責保険の等級表を掲載します)。

欠損障害

事故により、上肢(腕)の一部が欠損した(切断等によりなくなった)場合、その部位に応じて下記のような後遺障害が認定されます。

等級障害の程度
第1級3号両上肢をひじ関節以上で失ったもの
第2級3号両上肢を手関節以上で失ったもの
第4級4号1上肢をひじ関節以上で失ったもの
第5級4号1上肢を手関節以上で失ったもの

たとえば、交通事故外傷のために右上肢を肘関節と手関節の中間あたりで切断しなければならなかった場合、「1上肢を手関節以上で失ったもの」として第4級4号、というようなことになります。

機能障害

事故による治療が終了した時点で、上肢の関節の機能に障害を残した場合、その程度に応じて下記のような後遺障害が認定されます。

等級障害の程度
第1級4号両上肢の用を全廃したもの
第5級6号1上肢の用を全廃したもの
第6級6号1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
第8級6号1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
第10級10号1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
第12級6号1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

上肢の3大関節というのは、肩関節、肘関節、手関節(手首)の3つをいいます。

「関節の用を廃したもの」とは、関節が強直(ほぼ動かないこと)したり、完全弛緩性麻痺となったりした場合等々をいいます。

上肢の3大関節の全てが「用を廃した」場合、「上肢の用を全廃した」とされます。

「関節に著しい運動障害を残すもの」とは、関節の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されている場合等々をいいます。

「関節に運動障害を残すもの」とは、関節の可動域が健側の可動域角度の4分の3以下に制限されていることをいいます。

たとえば、右上肢の橈骨遠位端骨折により、右手関節(手首)の可動域が、健常な左手関節の可動域よりも2分の1以下になってしまったという場合、「1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」として第10級10号、というようなことになります。

変形障害

骨折の治療が終了した時点で、骨に変形が残ってしまった場合の後遺障害等級は下記のとおりです。

等級障害の程度
第7級9号1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
第8級8号1上肢に偽関節を残すもの
第12級8号長管骨に変形を残すもの

「長管骨に変形を残すもの」とは、上腕骨に「外見から想見できる程度以上の」変形を残した場合、橈骨又は尺骨の変形で「その程度が著しい」場合、上腕骨、橈骨、尺骨の骨折部に癒合不全がある場合、上記の骨の骨端部のほとんどを欠損した場合、等々を言います。

癒合不全というのは、骨を固定しても自然の治癒力で接合せず、半永久的に離れたままの状態が残ってしまったということです。

そのような癒合不全の中でも、上腕骨の骨幹部等や、橈骨及び尺骨双方の骨幹部等(中心的な部分)に癒合不全がある等の、特に重要なものについては、「偽関節を残すもの」としてより高い第8級が認定されます。

そして、「偽関節」の中でも、常に硬性補装具を要するような重度の場合には、「偽関節を残し、常に硬性補装具を必要とするもの」として、さらに高い第7級が認定されます。

末梢神経の障害

上肢の骨折をしたが、骨が適切に癒合し、欠損障害、機能障害、変形障害が残らなかったという場合でも、手術の際にメスを入れた等の影響から、骨折部に慢性的な痛みや痺れ等の抹消神経障害が残ってしまう場合があります。

このような抹消神経障害について、画像等によりその障害が「医学的に証明可能」であるときは第12級13号、「医学的に説明可能」であるときは第14級9号が認定されることになります。